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どこにもない高付加価値商品を武器に

電子機器や分析装置の設計、組立て、修理などをメインの事業とする深澤電工(静岡県駿東郡長泉町)が初めて取り組んだ自社製品が、ハイブリッド・ハンドドライヤー『SAION(さいおん)』だ。展示会では、このオリジナル製品をフックに自社をPR。新たな出会いを生み出していく。

オリジナル製品にチャレンジ

静岡県のJR三島駅からほど近い場所に工場を構える深澤電工。同社は、安定した技術力を駆使し、電子機器や分析装置の設計・組立て・修理などを行っている。そんな同社が初の自社製品として開発から取り組み、2011年に発売を開始したのが、ハイブリッド・ハンドドライヤー『SAION(さいおん)』だ。

「ファミレスに行ったとき、手を乾かすハンドドライヤーの音が、トイレの外にいても聞こえるほど大きかったことが気になった」。深澤好正社長は、製品開発のきっかけをこう語る。取引先から受注する仕事だけでなく、自社でオリジナルのものづくりに取り組もうと考えていた時だった。

こうして、音が静かなハンドドライヤーの開発が始まった。「何人もの人が一度に使うような場所ではなく、歯科医院やまちの小さなレストランなど、小規模店舗のトイレなどに設置することをイメージした」(深澤氏)。開発に際し深澤氏は、単に「静か」なだけでなく、付加価値をつけようと考えた。マンションや戸建て住宅といった家庭のトイレや脱衣所で利用されることを想定し、小さなトイレや脱衣所を暖めることのできる暖房機能と簡易式の空気清浄機能をつけた。

また、これまでのハンドドライヤーは、取り付けに専用の設置工事が必要だった。それを家庭でも使ってもらえるように、コンセントを差し込むだけで使えるように工夫した。サイズも、狭い洗面台のちょっとした隙間に置いたり、壁にかけたりして使えるよう、コンパクトにすることで、手軽に設置できることをアピールした。


光を活用して存在をアピール

『SAION』をつくってから、同社はさまざまな展示会に出展を重ねて来た。東京ビッグサイトで開催される東京ビジネス・サミット(以下、サミット)は「ほかの場所で開催された地方の展示会と比べると、多くの人が足を運んでくれていた」(深澤氏)。さまざまな業種・業態の企業が集まるサミットは、来場者の属性も多種多様だ。各地域の金融機関が視察ツアーを組んでいることもあり、ほかの展示会では出合うことができない、さまざまな地域の企業経営者と会うこともできる。「九州からの引き合いも複数あった」と深澤氏は言う。

同社の場合、事業の柱はほかにもあるため、わざわざ遠方へ出向いて営業をすることは難しい。それがサミットに出展することで、さまざまな地域からやってきた企業経営者や、取り扱い商材を探しに来たバイヤーと出合うことができるのだ。「たった二日間で大きな営業効果が見込める」(深澤氏)。

ただし、単に出展するだけでは、目立たずに埋もれてしまうことも考えられる。訪れた人たちに、いかに興味をもってもらうか――。そこを工夫することで、自社を印象づけることができるのだ。「さまざまな展示会に出展したことで、どういう展示をすれば人が集まるのかがわかってきた」と深澤氏は言う。

たとえば展示用の『SAION』には、前面にLEDライトをつけている。「光るものに人は集まってくる」と深澤氏は笑う。小さなブースでも、製品を光らせたり、見やすく大きなパネルをつくって展示したりすることで、より人の目を
ひくことができるのだ。さらに、ブースの中で人が来るのを待つのではなく、前に立ち、来場者に声をかけて実際に『SAION』を使ってもらう。製品を試してもらうことで、記憶に残りやすくなり、「この製品をつくる技術を使い、つくって欲しいものがあるができないだろうか?」と新たな仕事の相談にもつながっていくのだ。


数字では表せない多くの利益

SAIONはこれまでのべ500台ほどが売れている。それほど大きくヒットしているわけではないが、「初めて自社製品づくりに取り組んだことで、数字で表せない利益が多く得られた」と深澤氏は言う。たとえば、製品の川上から川下まで、一連の流れを把握できた。これまで同社は、こうした流れの一部を担うにすぎなかった。それが、「一つの製品が完成するまでにどんな行程が必要で、どんなところに気を使うのかがわかった」(深澤氏)。また、プラスチックメーカーやシールメーカーからデザイナーまで、これまでとは違う業種・業界の企業ともつながりができた。こうしたことも収穫の一つだったという。

現在、同社が居を構える静岡県東部地域は、がんセンターを中心に、ファルマバレーとして医療研究機関、医薬品・医療機器メーカーといった企業が集積しつつある。そうした流れもあり、次なる自社製品は、医療関連機器を企画している。

実は同社は、高齢者と障害者雇用の先駆者として、日本国内のみならず、海外からの視察がくるほど名を知られている企業でもある。「社内には、車いすで生活をしている社員もいる。そうした社員たちに、今困っていることは何か直接アイデアを出してもらうことで、より実態に沿った製品を開発できる。それがウチの強み」と深澤氏は言う。

同社は、14年のビジネス・サミットにも『SAION』を持って展示会に臨む。だが、「オリジナル製品を売り込むことだけが目的ではない」と深澤氏は言う。『SAION』をフックにブースに人を呼び、本業である電子部品関連や、新たに初めた「天使の掃除」というトイレ掃除専門の派遣事業といった同社の取り組みを、展示会に訪れた、多くの人びとに認知させるのだ。展示会を「自動営業装置」ととらえ、活用することで、新たな仕事へとつなげていく。


※月刊ビジネスサミット2014年8月号より