がんばろうニッポンの中小企業とは?

電気の通っていない地域を明るく

精力的な活動によって海外展開の道を切り開く

タイやシンガポールに現地法人を設け、海外の顧客からの受注に成功している企業がある。 電気工事業のエイペックエンジニアリング(東京都中央区)だ。 同社は精力的に海外を訪問することによって、独自の人的ネットワークを構築し、技術をアピールしている。

国内市場が縮小、海外へ挑戦

小規模な組織でありながら、海外からの受注を成功させている企業がある。電気工事業のエイペックエンジニアリングだ。

代表の杉本新治郎氏は設備工事会社を退職し、1995年に独立。創業当初は順調な業績だったが、「2003年頃から日本国内の電気工事市場は縮小傾向にあると感じ始めた」(杉本氏)。市場減少を危惧し、海外へ展開しようと調査と営業活動を開始。04年にタイでの電気工事の受注に初めて成功した。以来、タイやシンガポール、中国、韓国、メキシコなどに毎月赴き、現地の政府要人、公的機関、日系企業との情報交換を続け、保有技術のアピール、各国の最新の工事情報の入手などを行い、受注につなげている。

海外進出した当初は、品質を確保するため現地の協力会社の指導をしていたが、現在では日本と現地の協力会社との間の技術格差はほとんどなくなったという。杉本氏は電気工事技術者としての経歴が長く、社長自らが設計図・施工図を作成する。工事管理者とは英語でやりとりをするが、しっかりした図面を用意していれば、言語の違いによる問題はほとんどない。杉本氏は、「海外といっても移動距離が長いだけ。国内での工事と何ら変わるところはない」という。

海外進出を成功させるために重要なことは、「人的ネットワークと信用の構築」と杉本氏は言う。その活動的な試みは、国土交通省が発行する「地方・中小建設企業のための海外進出ガイダンス」にも事例として紹介されるほどだ。

資金調達に関わる活動も積極的だ。タイとシンガポールにある現地法人は、現地の電気工事会社と共同出資し設立。運転資金に関しては、現地の金融機関と交渉することもあるという。


小規模を活かした機動力

積極的な活動の傍ら、「4つのパターンで健康のペース配分を維持してきたのが自慢」と語る杉本氏。毎日、朝起きて腹筋と腕立て伏せを70回程度。毎週、水泳に行き、毎月、ゴルフや映画などリラックスできることをやる。毎年、坐禅を組む。社会人になって以来、このペースを絶やすことなく30年以上継続してきた。

11年に東日本大震災が発生した際、国内では電気部材の調達が極端に困難な状態に陥った。そんなとき、杉本氏は独自の人的ネットワークを活かして、海外の安くて優れた電気ケーブルを見極めて調達し、困っていた大手企業の依頼にも機動力を活かしてスピーディに対応。受注を拡大することに成功した。電気工事を行う一方、アジアでの海外展開向けに「パラソーラー」と呼ぶ自社製品を開発した。通常は屋外でカフェなどをする際にアンブレラとして機能し、災害時には太陽光のエネルギーで照明や通信の機能が稼動し、防災センターとしての役割を果たす。震災のときに防災設備がうまく活用されなかった知見から、有事の際に本来の力を発揮するように、と日常生活と調和する防災のアイディアだ。日頃からの習慣化した行動と、機動力の良さは、仕事にも活かしているようだ。


アジア諸国を明るく

12年には国連ハビタット(都市化や居住に関する様々な問題に取り組む国連機関)会議に、国土交通省からの推薦を受けて参加し、アジア諸国向けの発表を行ったという。各国の参加者から同社に対する質疑が集中。アジア諸国ではいまだ電気が通っていない地域が多く、夜道を歩くのは危険な状態なのだという。太陽光発電を用い、低い維持コストで実現できる同社の技術が魅力的に映った結果だろう。

国連ハビタット会議でのきっかけもあり、現在はタイ企業からの依頼でパラソーラーの展開がはじまった。「太陽光発電所を始めとする設備を建設し、電気の通っていない地域の生活に貢献したい。地域の人々にとって、かけがえのない財産となるような施設をつくることを目指している」と語る杉本氏。今後は上場を目指したいという。

電気工事の営業活動は、人の輪からエネルギーを吸収し、アジアの人々をも明るくしている。


※月刊ビジネスサミット2014年6月号より

  • 株式会社エイペックエンジニアリング
  • 東京都中央区銀座六丁目6-1 銀座風月堂ビル5F
  • 03-5537-7706