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「折り畳む文化」を継承、進化させる

宇宙技術から生まれた「ミウラ折り」を商品化

パッと開いてサッと閉じる――開閉がワンアクションでできるミウラ折りの地図。 宇宙構造物の設計家であり、宇宙実験衛星の太陽電池パネルなどの設計で知られる三浦公こうりょう亮東京大学名誉教授が考案した折りの技法「ミウラ折り」を活用した地図だ。 三浦氏からライセンスを受け、ミウラ折りを取り入れた製品の開発に取り組んでいるミウラ折りラボは、開閉が簡単・迅速にでき、折り目が破れにくいポケット地図や自動車のサンシェード(日除け)、ランプシェード、紙袋(折り袋)などを商品化し、注目を集めている。

ミウラ折りの誕生

東京大学宇宙航空研究所、文部科学省宇宙科学研究所で宇宙構造工学を研究、数多くの人工衛星・惑星の開発設計に携わり、新しい宇宙構造物の発明と宇宙での構築を実現してきた三浦公亮東大名誉教授。ミウラ折りは三浦氏の宇宙構造物の研究成果から生まれた画期的な折りの技法だ。

人口衛星の太陽光発電パネルなど、大きな平面体の宇宙構造物を宇宙に持ち出すには、小さく折り畳んで運ぶ必要があるが、三つ折り、四つ折りと折り畳んだものを宇宙空間で開閉、展開するのも容易ではない。この難問を解決する折り畳み法として考案された「ミウラ折り」は、力を一定方向にかけるだけで人口衛星に搭載した太陽光パネルの展開と収納が素早くできる折り畳み技法として注目を浴びた。三浦教授が付けた科学的名称は「二重波型可展構造」というものだったが、1980年に英国折紙協会がMiura-Ori(ミウラ折り)の名称を与え、ミウラ折りの呼称が定着する。


ミウラ折りの特徴

ミウラ折りの特徴は、縦の折り目のいずれかに傾斜をつけることで、折り目の重なりを少しずつずらし、折った時にかさばらず、かつ立体的になるように工夫された畳み方にある。通常の四つ折りや八つ折りでは、折り目が重なるところがふくらんでしまい、開くときも順を追って一辺ずつ開かなければならない。 しかし、「ミウラ折り」なら、コンパクトに折り畳めるだけでなく、折り畳んだ一端を引くだけで全体を一気に開ける。重さ・大きさを極端に制限され、かつ確実さを保つために簡素な構造が求められる宇宙開発の技術にまさに最適の技法である。

スペースシャトル・エンデバーに搭乗した若田光一宇宙飛行士がロボットアームで回収したことで知られる「宇宙実験・観測フリーフライヤー」(SpaceFlyer Unit)。この衛星は1995年にHIIロケット3号機で打ち上げられ、軌道上で数か月の実験を行った。「ミウラ折り」の平面収納・展開法を用いた「2次元展開アレイシステム」は、その実験の1つだった。折り畳んだ太陽電池パネルの一端をひっぱり、約6メートル四方の平面に効率よく広げるという実験だったが、ミウラ折りはこの実験で一躍有名になった。


ミウラ折りマップを製作

ミウラ折りを地図の折り方に応用したのがミウラ折りラボが製作するミウラ折りマップだ。両端のカバー部を持って、左右に引っ張ればたちまち広がり、瞬時にA4からA1サイズの紙面を閲覧できる。折り畳みが簡単・迅速な上、ミウラ折りは山折りと谷折りの方向が一定なので、折り畳みを繰り返しても折り目が破れにくい構造になっており、折り筋の強度も保持される。

このため、ミウラ折りは携帯用の観光地図や施設の案内図などに多数採用され、丈夫で一発開閉ができる地図、案内図として好評を博している。毎年2月に開催される東京マラソンのコース&観光マップにミウラ折りが採用され、市民ランナーやボランティアに重宝されている。このほか、路線図、観光案内、商品カタログ、防災マップ、取扱説明書などにミウラ折りが使われており、なかでもミウラ折りのポケット路線図は保管率100%に近い長期保管・長期利用の実績を誇る。また、外国人向けの都内各所のショッピングガイドマップも英語、中国語、韓国語版を東京都から受注製作しており、東京を訪れる外国人観光客に無料配布されている。


転機は東京マラソン

ミウラ折りマップは今では認知度が上がり、観光、防災、学校、医療、商店街などの印刷物に採用され、便利グッズとして活用されているが、阿彦由美ミウラ折りラボ社長によれば「以前は、ミウラ折りは高いと言われ、普及するのにかなり時間がかかった。だが、機械化の成功により、コストダウンを図ることで普及に弾みがついた」という。そして、2007年に始まった東京マラソンのポケット案内図にミウラ折りが採用されたことで知名度が上がり、ミウラ折りマップの需要拡大につながった。

「東京マラソン案内図は企画・デザインから製作まで当社が担当し、それこそ年末年始は毎年、正月返上で製作に追われる日々が続いている」(阿彦社長)という。

ミウラ折り商品は地図、案内図の印刷物以外でもフラワーシェードやランプシェードなどの工芸品、インテリア用品に及んでおり、とくにピーチコート紙で製作した純白のランプシェードの商品化に取り組んでいる。 地図からインテリアグッズへとミウラ折りの版図を広げる新しい挑戦が始まっている。


※月刊ビジネスサミット2014年4月号より

  • 株式会社ミウラ折りラボ
  • 東京都新宿区住吉町1-12 新宿曙橋ビル6F
  • 03-6457-7272