がんばろうニッポンの中小企業とは?

心に残る思い出を

共創のマネジメントで「感動」を提供

愛犬とともに気兼ねなく旅行を楽しみたいと考える愛犬家の間で、 今高い人気を誇るペット同伴専門宿がある。 ベリークルーズ(千葉県館山市)が運営する「しぶごえグループ」だ。 同社は「心に残る思い出を」と社員一丸となってサービスを提供。感動を創出している。

共創のマネジメントで「感動」を提供

愛犬とともに気兼ねなく旅行を楽しみたいと考える愛犬家の間で、
今高い人気を誇るペット同伴専門宿がある。
ベリークルーズ(千葉県館山市)が運営する「しぶごえグループ」だ。
同社は「心に残る思い出を」と社員一丸となってサービスを提供。感動を創出している。


知らないことが強みに

愛犬と旅行をしたいと思っても、ペット同伴で宿泊できる宿はまだ少ない。たとえできたとしても、厳しいルールがある宿が多く、自由に楽しめない。そんな愛犬家の声に応え、多くのリピーターを獲得しているのが、ベリークルーズだ。

同社が運営するペット同伴専門宿「しぶごえグループ」は、いくら吠えてもいい「無駄吠えDAY」といったイベントDAYを月に数回実施。吠えるクセのある犬を連れている人でも楽しめるよう工夫するなど、さまざまなサービスを提供している。

「実は犬を飼ったことがない」と同社の創業者、野村日狩会長は自身について語る。縁あって不良債権化していたホテルの再建を手がけることになったのが、ペット同伴専門宿を始めるきっかけとなった。2001年頃のことだ。接待ゴルフ客用に建てられたホテルは、オープン直後にバブルがはじけ来客数は激減。敷地内にある杉林とゴルフのショートコースは使われずに荒れていた。

「ほかに観光資源もなく人を呼ぶためにどうしたらいいか知恵を絞った」(野村氏)。ペット同伴宿の企画は、さまざまな集客案の一つだった。裏山でペットの犬を放して伸び伸びと遊んでもらったらと考えたのだ。最初は一部の部屋をペット同伴可としたが、想像以上に需要があったことから、敷地内にドッグランなどの施設を手づくりし、ペット連れ専用の宿とした。

ペット同伴可の宿泊施設の多くでは、利用客に対して厳しいきまりの遵守を要求している。しかし野村氏は、こうしたルールを設けず、とにかく掃除を徹底させた。自身も犬を飼ったことがなく、同業他社を知らないが故の徹底した清掃が、清潔で細かな決まりもないと愛犬家に好評となったのだ。


「感謝」がモチベーション

こうしてペット同伴専門宿の運営ノウハウを蓄積した野村氏は、05年、新たにベリークルーズを設立。「しぶごえ」という屋号で、千葉県館山にある使われなくなった保養所を借り、ペット同伴専門宿をオープンさせた。「最初の頃は、今のサービスでよいのかがわからずに悩んだ」と野村氏は言う。常日頃から従業員と話し合い、「これをしたら喜んでくれるだろう」と思うことを実践していった。
たとえば「あの宿に泊まってよかった」と思ってもらいたいと、サプライズを仕掛けた。旅行から帰ってきてポストを開けたとき、宿から「おかえりなさい!」というメッセージカードが届く仕組みを考えたのだ。

こうしたアイデアは野村氏だけが考えだしたものではない。アルバイトも社員も皆が「来てくれた人の心に残るものを提供したい」と、さまざまなアイデアを実現させていった。

また、夜9時には夜のスイーツタイムを設け、宿泊客との密なコミュニケーションをとることで改善のヒントをもらい、より使いやすい宿へと進化させた。現在しぶごえグループのリピート率は50%ほどという驚異的なリピート率を誇っている。


スター選手をつくる

「今後、店舗数を増やし、部屋数を120部屋にまで持って行きたい」と語る野村氏。ペット同伴専門宿の現状をみると、一つの会社で120部屋以上あれば、業界でのシェアナンバーワンも夢ではない。業界トップに立つことで、日本のペット旅行におけるスタンダードを確立させていきたいというのだ。

現在しぶごえグループには6つの宿がある。それを20、30と増やしていくためにまず急がれるのは、自ら決断できるリーダーの育成だ。

これまでは、野村氏と創業メンバーである現社長の二人が決断し、運営方針の決定や社内の雰囲気の醸成などのマネジメントを行ってきた。だが、今後店舗数を増やしていくことを考えると、社長や会長と同じ目線で考えることができ、決断できる人材が必要だ。野村氏は現在42歳。この若さで会長職に就いたのも、こうしたリーダー育成の一環だと言う。「自ら決断し、失敗を繰り返すことも必要」(野村氏)。自分が一歩引くことで、本当の意味で決断できる次のリーダーを育てていこうというのだ。

各店舗に「あの人のようになりたい」と若手社員から敬愛されるような人材が育ってくれば、マニュアルがなくても「人の〝生き様〞が企業風土となっていく」と語る野村氏。

人に忘れられないような感動を創出していきたいという同社のスピリッツ。それを体現できる人材が育つことで、日本のペット旅行業界はこれまで以上に大きく成長を果たすことだろう。


※月刊ビジネスサミット2014年5月号より

  • 株式会社ベリークルーズ
  • 千葉県館山市北条2119 植木ビル2F
  • 0470-22-1167