がんばろうニッポンの中小企業とは?

ロスの少ない運営を目指す

6次産業化に挑む!消費者ニーズを先取り

10年以上前から米と野菜の直売所を運営。近年はカラフルな野菜の色を活かしたオリジナル製品を企画し、製造、販売を行っているオジマスカイサービス(宮城県登米市)。農産物の生産のみにとどまらず、時代に合わせた新たな取り組みにチャレンジしている。

直売所から発展

オジマスカイサービスは、米や大豆、野菜など、85ヘクタールほどの農地を持つ農業法人だ。代表の山内孝彦氏は、アメリカで無人ヘリコプターを活用した農薬散布の方法を知り、それを自社で応用。効率化を進めてきた。そんな同社が、生産だけでなく、加工、販売までを一貫して行う6次化への取り組みを開始したきっかけは、今から10年ほど前に、仙台で直売所を始めたことにほかならない。

「たまたま、仙台市にあるファッションビル内の1画で、イベントのプロデュースを依頼された」。こう語るのは、同社が運営する直売所「穂野か」の仙台統括マネージャー、佐々木ゆう子氏だ。当時、証券会社に勤務していた佐々木氏は、宮城県登米市中田町で大規模農場を運営している山内氏とは旧知の仲。「産直イベントをやらないか」と持ちかけ、山内氏が即決で承諾した。

今でこそ、農家が農産物を直接販売する直売所は、さまざまな地域でみることができるが、当時は同社で多く収穫できる米と、さまざまな野菜を使った製品をつくれないかと模索する中で生まれた「カラフルベジタブル」。米粉の麺をカボチャやパプリカなどの野菜の粉末で色づけ。その華やかな色合いはレストランやホテル、ウエディング業界などを中心に喜ばれている2014まだめずらしく、佐々木氏が企画したイベントは想像以上の賑わいをみせた。そこで、空いていた区画を借り、短期間のイベントではなく、正式な店舗として産地直送の米や野菜を販売する直売所をつくったのだ。


ロスの少ない運営のために

直売所の強みは、流通経路がシンプルで市場を通すタイムロスがないため、鮮度の高い野菜を棚に並べることができるところにある。同社の場合、登米市にある自社農場近隣の農家の農産物も一緒に販売している。「多くの農家と提携することで、販売できる野菜のバリエーションが広がる」と佐々木氏は語る。だが、当日売れなかった野菜をどうするかが課題となった。

直売所では、基本的に1日置いて売り切れなかった野菜は、翌日棚に並べることはしない。かといって、すべての野菜が当日売り切れるとも限らない。そこで考えたのが、これらの野菜を使った総菜をつくり販売することだった。こうして生まれた野菜中心の惣菜は、野菜を買うついでに手にとってもらえる商品として定着していった。 新鮮でおいしい野菜を手に入れられると、「穂野か」は多くの人が訪れる直売所へと成長した。だが、「つくったものを販売するだけでは、いずれ限界が来る」(佐々木氏)。今のうちに新たな展開を模索したいと考え、2011年、同社のメインの農産物である米と、同社でとれる野菜を使った、オリジナル製品の開発がはじまった。 こうして、米粉の麺にカボチャやパプリカといった野菜の粉末を混ぜて色づけした、『ベジフルカラフル 野菜ヌードル』が誕生した。「ベジフルカラフルシリーズの第2弾として野菜ジャムも開発。販売を開始している」(佐々木氏)。情報は自ら取りに行く オリジナル製品の開発を通し、「6次化の取り組みは自社だけですべて完結させる必要はないと感じた」と佐々木氏は言う。加工専門メーカーや販売店と協業し、一つの製品をつくった方がいい場合もある。不得手な部分を代行してもらうことで、無理なく新たな取り組みに着手することができるからだ。 利益率から考えれば、自社ですべて行った方がいい。だが、会社規模が小さいところこそ、製品開発の過程を分担することで無駄を省き、効率のよい動き方ができる。「ウチの場合、ほかの会社の協力を得ず、ほとんどすべて自分たちで行った。だが、それゆえの遠回りや寄り道はいろいろとあったと思う。最初から販売店と連携を取り、アドバイスを受け入れていれば回避できたこともあるかもしれない」と佐々木氏は振り返る。 たとえば、最初に手がけたベジフルカラフルシリーズの米粉ヌードル。開発当初は、カラフルでお洒落な見た目の米粉の麺は、首都圏の若い女性に人気になるだろうと、一般消費者に向けて販路を開拓する予定だった。ところが、高級スーパーや百貨店の担当者と話をすると、「縦長のサイズが棚に並べにくい」と言われ、取り扱い先は思うように増えなかった。「置かれる棚の高さなど、気にしたことがなかった」(佐々木氏)。 スマートな見た目にするため、縦置きを想定してパッケージをデザインしたが、実際に縦に置いてみると、高さがありすぎて通常の棚には入らなかったのだ。かといって横に並べては、せっかくのパッケージを活かすことができない。こうした問題は、「最初から販売専門の企業と組んでいれば避けられたこと」と佐々木氏は振り返る。 幸いにして、『ベジフルカラフル野菜ヌードル』は、レストランやホテル、ウエディング関連施設などから、お祝いの席などカラフルな色の麺が彩りとして使えると、業務用としての需要があった。当初の想定とは異なるものの、業務用としての販路は大きく広がってきている。 すべてを自分たちでやれば、利益率は高くなる。だが、これまで農業に従事していた人が、突然製造や販路開拓をしていくのは至難の業だ。まずは小規模で加工を委託し、ある程度の数が見込めるようになった段階で自社製造へと切り替える方法を採ったとしても、「決して遅くはない」(佐々木氏)。カルチャー農園事業でファンづくり「野菜の色に着目した『ベジフルカラフル』は、シリーズとして今後も開発を続けたい」と佐々木氏は言う。ほかにも、米と同じくらいの生産量がある、大豆を使った最終製品の開発など、これまでの反省を踏まえた製品開発を続けている。 さらに、同社の取り組みは、オリジナル製品をつくるのみにとどまらない。「14年4月からは、『穂野か アグリカルチャークラブ』を実施する」と佐々木氏は言う。 直売所に来る常連客や、同社が経営する『農直レストラン惣菜処』に来る人などから「野菜を自分でつくってみたい」という声が多くあった。そこで、カルチャースクールのように皆が集まって野菜をつくる講座を開催することになったのだ。 無農薬栽培を10年以上行っている農家の人を講師とし、まずは50区画をクラブ員に貸し出す。種や資材も用意し、無農薬栽培の方法を教える。初回のコースは黒カブや紫ニンジンなど、普段あまりスーパーで見かけることのない西洋野菜コースと、通常の日本野菜コースの2つだ。「みんなで楽しめるものにしたいと、さまざまな仕掛けを考えた」(佐々木氏)。その一つが収穫した作物をレストランのシェフに調理してもらえる食事会の開催だ。すでに提携先のレストランは決まっている。自分たちが育てた作物をシェフが調理してくれるというイベントは、参加者のわくわく感を創出するものとなっている。「さまざまなアプローチから、『穂野か』のファンをつくっていく」と語る佐々木氏。農業の枠組みに囚われない新たな取り組みは、これからも続く。


※月刊ビジネスサミット2014年5月号より

  • 農業生産法人株式会社オジマスカイサービス
  • 宮城県登米市中田町浅水小島13
  • 022-371-8402